池波正太郎 食卓の情景。



「鬼平犯科帳」で有名な作家、
池波正太郎の食にまつわるエッセイなのだが、
これがなかなか、読んでいると生唾がでてくる
秀逸な一冊だ。

この本は、食通としても知られる池波正太郎が、
昭和四十年代頃に週刊朝日に連載したエッセイをまとめたもの。

どうも、池波正太郎は、家にこもって書き続ける
作家という職業なればこそ、食は大切、という
持論をもっていたらしい。

そんな食通の池波正太郎が書いたものだけあって、
写真をつかって表現できるグルメブログとちがい、
文章一本でその食べ物のおいしさを伝える作家の力はスゴい。。と
あらためて思わせてくれる作品だ。

一節を借りる。

“酒が出て、軍鶏の鍋が出た。
 じいさんはそのとき、芋酒なるものを、しきりにすすった。
 なんでも、山の芋を切って熱湯にひたし、
 引きあげて摺りつぶし、これへ酒を入れてねってから、燗をして出す。

 「こいつをやらないと、若い女房の相手ができないのでね」と、
 三井のじいさんが眼を細めていう。”

この芋酒の話は、後日、鬼平犯科帳の一篇に
登場することになるのだが、
小説の中に食の話が出てくると、妙にリアル感が増すと思うのは
酒飲みの私特有の感覚なのだろうか。

そんなシブさをもった池波正太郎だが、
チキンライスが大好物で、取材旅行に出ると
毎日でもチキンライスでいい、という話などもでてきて
微笑ましい。

ともあれ、その日に食べたものを日々、
日記につけていたという、池波正太郎の食に対する愛情は、
グルメブロガーも真っ青、なのである。


【池波正太郎 食卓の情景】
 食卓の情景改版


東京グルメ居酒屋訪問記のツイッター はじめました!
twitter_logo_outline1.png


レストランの人気blogランキングへはこちら
ブログランキングバナー