酒にまじわれば。



東京酒場漂流記」で酒飲みとしても高名な(?)
なぎらけんいちさんの新刊文庫。

なぎらけんいちさんの、人生におけるさまざまな場面であった
酒にまつわる小噺集だ。

あっ、こんなことあるある・・・という
酒飲みとしての親近感を覚えるのは私だけだろうか・・

若いころの酸っぱい酒の想い出も、
電車の中で鍋を炊いて宴会するおじさんの話も
(これはさすがにお目にかかったことないが・・)
酒飲みなら誰しも経験する「悪魔の酒」も、
人生の中で思い当たるあれやこれやのイチ場面だ。

その中のひとつに「叱られ酒」というのがあった。
大の大人が、浅草の某バーで、おばちゃんに
「叱られるため」通う店。

ずいぶん昔になるが、私が会社に入社して、
初めて上司に連れて行かれた店が、新地のこの類の店だった。

まだその店があるとまずいので、
仮に「ラウンジY」としておく。

そのラウンジYには、いろんな企業の経営クラスの人たちが
叱られにくるそうなのだが、座っただけで8千円、
ボトルをいれたらウン万円という店になぜわざわざ
叱られにくるのか、若かった私にはどうにも理解できなかった。

なんせ、そこのママ(当時でもそうとうのベテランだった)は、
私を相手に、1時間半も延々と伊勢湾台風がいかに凄かったか
こんこんと話し聞かせるようにしゃべり続けるのだ。
(ちなみに2回目につれていかれたときも
 この伊勢湾台風の話だった・・・)

そのときは、早く次のお客さんがはいってきてくれないかと
そればかり念じながら、大人ってタイヘン・・・と
思ったことをよく覚えている。

そんな自分の酒飲み人生をなにかと思い出させる
しみじみ読む本ではないが、
なんだかあっけらかんとしたような雰囲気がなかなかいい本だった。


【酒にまじわれば なぎらけんいち 】
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